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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

ブックカフェ二十世紀[ネオ書房運営](神保町)切通ワールドを愛する棚主たちが集うシェア型書店

公開日: 更新日:

 神保町の古書店「@ワンダー」の2階にある「ブックカフェ二十世紀」が、あの切通さんの「ネオ書房」運営の本屋とカフェになっているよ──。との情報が届いて、いざ行かん。切通さんとは、ウルトラマンや映画などサブカルに強い文芸評論家、脚本家だ。

 足を踏み入れると、1棚ずつ貸し出されたシェア型だと一目で分かる。「タイガーマスク」が並ぶ棚あり、横山光輝の本がかたまる棚あり。他に類を見ない、“切通ワールド”を愛する棚主たちが集うシェア型だ。棚貸料3300円~の。

「平凡パンチ」ずらりの棚の前で同行カメラマンが、「これ、今じゃ絶対に撮れない」と85年刊号の表紙写真にくぎ付けになっている。歌舞伎町の路上で上半身裸の女の子4人がカメラ目線を強く向けている写真だった。

映画の関係本やフィギュアが置かれた切通さん直々の棚も

 独特の“昭和遺産”にドキドキしていると、店主・切通理作さんが現れた。なぜ、いつからこの店を?

「地元の阿佐谷で、自分の本を置くところから始めた古本屋『ネオ書房』をやって6年なんですが、狭くてイベントにマックス15人しか入れないので。ここ神保町店は一昨年の5月から」

 おそらく70平方メートルほど。広い! 奥に進むと、「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」など映画ごとに関係本やフィギュアが置かれた、切通さん直々の棚がある。広々20席のカフェスペースもある。

「イベント時は40~50人まで大丈夫です。ウルトラマンのスーツアクターだった古谷敏さん、昭和の映画などに詳しい佐藤利明さんらのトークを定期開催していて」と切通さん。リピーター続出と聞いて「すごっ」と思い、「(手話通訳をする)バリアフリー公演もやりました」との話に身を乗り出し。

 その芝居は、切通さん企画の「マルコとグリーンの海」(作/港岳彦、キャスト/桜木梨奈、カトウシンスケ)。演劇界のセクハラ、パワハラ問題に始まり、障害者差別などにも及び、被害者の中に加害者性が……と裏返っていくストーリーだとか。「見たかった」とつくづく。得意技によって、本屋さんの役割が広がりを見せているんだー。平台に脚本が積まれていた。買って帰った。

ウチの推し本

「暗渠アンソロジー Ankyologizm vol.1」暗渠us著

 秋武裕介、黒戌堂プロダクツ、皐月彩、鈴木農史、宮崎龍太らが執筆。

「『ウルトラマン』の監督らが暗渠(あんきょ)をテーマに随筆を書いたジン(自主出版物)です。地下に埋められ地上からは見えないけれど、まぶたの裏で川が流れていたとイメージする。それは、宇宙人が穴を掘って侵略活動をしているといった空想にもつながるから、特撮の監督たちは暗渠が好きなのかも……」

(1500円)

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